手足の関節が変形されたリウマチの患者さんが来院された。当院には、10年以上前に1度だけ来院されたことがある方でしたが、全く覚えていません。
メトトレキサートや生物学的製剤が登場してからは、ここまでひどい関節の腫れと破壊がある方は、最近ではとてもめずらしい。膝の関節はくの字に曲がり、手の指も変形し、手関節は腫れて見るからに痛そうでした。
漢方と鍼灸だけでリウマチが治る!?
ここまで状態が悪い人は珍しいので、不思議に思い薬は何を飲んでいるのかを確認すると、副作用が怖いため何も使用していないという。
では、今までどんな治療を受けていたのかをたずねると、漢方と他で鍼灸を受けていたとのこと。病院には1年前に行ったきりで通院されておらず、血液検査のデーターも分からなかった。
体質を変えれば、リウマチがよくなると思い、せっせと漢方を飲み、他の院で鍼灸を受けていたそうです。鍼灸の先生も漢方と鍼灸でよくなると言っていたようです。
副作用が怖いから、薬は飲みたくない
リウマチの薬は、メトトレキサート(MTX)で関節の破壊を抑え、痛みが強い方には、プレドニン(ステロイド)、痛み止めを処方するのが基本的な治療になります。
医者からステロイドという言葉を聞いただけで、「飲みたくない!」と拒否をする方が時々おられます。
薬への恐怖感から病院に行くのを勝手にやめてしまい、ネット上にある自分の考えを正当化させる治療を選び悪化させていきます。
自然だけに任せない、人工的なものも必要
このような自分のフィルターにかけ取り出された情報というものは、間違っていることがほとんどです。薬を使わなくてもよくなる、免疫の乱れを整えればリウマチはよくなるだの、話がめちゃくちゃです。
初期のリウマチの方であれば、生活習慣に気をつければ、免疫のバランスもよくなり、リウマチもよくなるかもしれませんが、もう、免疫が完全に狂った状態は、もう自然治癒とか言っている場合ではありません。「自然の働き」ではどうにもならない状態になっているのです。
たとえば、森を自然の状態に戻すというプロジェクトというものが、テレビで放送されたものを見たことがあります。完全に壊れた森を元にもどす作業には、植林や増えすぎた木や枝を切ったり、人間の手が必要になります。川も人工的なものが必要です。
自然の状態にもどす作業も何もしなければ、元通りにはなりません。リウマチも同じことです。関節が破壊し腫れた状態で、免疫の反乱も大きくなっているのに、自然に任せれば、ただ症状がひどくなるだけです。
自然治癒、自然の浄化作用ではどうにもならない状態になってしまっているのです。症状をよくするポイントは「自然と人工」の調和です。人工的に作られた薬で、痛みやホルモンをコントロールしつつ、自然治癒、自己回復能力を疎かにせずに積極的に使用するスタンスが必要です。そうすれば、薬だけ漢方だけ、鍼灸だけの治療よりも確実によくなります。偏らないことです。