痛みは私の治療のテーマですので、今回の『医道の日本』勉強になりました。
巻頭インタビューの大阪大学大学院医学系研究科
疼痛医学寄附講座教授柴田政彦先生の記事が勉強になります。
2014年 10月号 「医道の日本」誌より抜粋
「多くの人が最先端の技術を使えば非常によく効くと思いがちですが、実際には情報の提示、医者の説明を受けての安心が痛みに対して非常に大きな影響を与えることが分かってきました。つまり心理的なものの影響です。」
「痛みは主観であり、直接測ることができず、その影響の研究は十分に進んでいるとは言えません。そのあたりのテコ入れをしようということで、010年から厚生労働省の研究班で調査をはじめています」
痛みには心理面も関係する
医学の世界ででは痛みは分かっていないことがたくさんあります。
私は以前から「痛み」に興味があります。
例えば、ヘルニアや脊柱管狭窄症でブロック注射をするが痛みが取れないという方が時々おられます。
病院勤務時代もそういった方を時々みました。中には、痛みがまったく取れないので、心療内科を紹介された方もいました。
リウマチでもそうです。痛みが薬を飲んでも効かない。CRPが15でも痛みはない。逆にCRPがそれほど高くないのに激痛。こういう方も時々おられます。
私はこういう方には、何か性格的な特徴がある感じました。
そこから興味がでて様々な痛み関係の本を読みはじめました。
柴田先生も言われたようにこの分野はまだまだ分からないことばかりです。
関節が変形しているから痛いわけではない
なぜなら、今までの医学では、「形」という部分でしか診てこないからです。
患者の心理的な部分や性格、痛みで苦しんでいる患者の立場や環境を診てこなかったからです。
ここで言う環境とは、社会的環境と家庭環境になります。
社会的環境は、働いている人であれば仕事です。
仕事でも人間関係、仕事の充実度、部下との立場、上司との立場などなど仕事を取り巻く環境です。
また家庭では、夫婦関係、親子関係、同居しているのなら、嫁さん側の親なのか、夫の親なのか。
そういうことも、痛みには影響します。
患者さんにはこういうことを説明しているのですが、伝わらない人もおられます。
理解されない人に多いのは、腰の痛みの原因は変形した骨やヘルニアが影響していると思っているからです。
形の異常 = 痛み
リウマチ科の医師は痛みには詳しくない
こういう話をすると、怪訝な顔をする人や、「医者はそんな話をしなかった!」
こういう人も時々ですがいます。
多くの医者は自分の専門でしか考えません。
痛みが心理的、立場、夫婦関係などが関係するとは考えません。
整形外科の医者は、「痛み」という部分では考えないのです。
西洋医学は数値化、客観的視点で診ている
西洋医学は数値化です。
誰が診ても分かる「客観的」を重視します。
リウマチであれば、CRPなどの数値です。
ヘルニアや脊柱管狭窄症であれば、レントゲンやMRIの画像という誰が診ても分かるものです。
「数値化」というのは、何となく「科学ぽいく」市民権を得やすいので、信じてしまう人がいます。
しかし、痛みは「主観」が関係します。
画像や血液検査だけではわかりません。
それでもこういう話を信じない人がいたら聞いてみたい。
好きな芸能人やスポーツ選手に叩かれるのと、嫌いな人、苦手な人、会社で一番嫌いな人でも何でもいいですが、
まったく同じ強さで叩かれたら、痛みが違うのはなぜですか?
同じ強さで叩かれれば、物理的には同じ痛みなはずです。なぜ、違うのでしょうか?
ここに主観が入っているかではないでしょうか?
知識がなければ、世界を正しく見ることはできません。歪んで世界を見ることになります。
知識の分母の数で世界の見え方は変わります。
「痛みが取れる橋がありますよ!」 「ここを渡りましょう!!」
こう言っても、知識がない人には橋は見えません。歪んだ世界しか見ることができないからです。
せめて、見ようとしてくれればいいのですが、こういう話を拒否する人には見えないのです。