リウマチの患者で長期間続いている方によくみられる症状としてアロディニア(通常痛みを感じないはずの刺激によって起こる痛み)と痛覚過敏症(通常痛みを感じる刺激をより強く感じる)というものがあります。
リウマチの人は痛がりの人?
アロディニアや痛覚過敏というものは、私が学生の頃、25年ほど前は、学校でも習ったことがありませんでした。見習い時代の頃、リウマチの人は、なんでこんあ神経質な人が多いんだろうか?といつも疑問に感じていました。例えば、症状を診るために、痛みを感じることがなく、腫れもない関節や筋(腕や足の)に少し触っただけで、「痛い!!」と騒ぐ人が時々おられました。神経質な性格の人だと思わっていましたが、今だったら理解できます。 アロディニアや痛覚過敏が起きていたんですね。
このアロディニアや痛覚過敏という現象は、線維筋痛症から起きていると思われます。関節リウマチ患者の線維筋痛症の合併率は15.8%であると言われています。また、線維筋痛症の合併群は非合併群より、アロディニア、腫脹のない関節の痛みが多いことが明らかになっており、QOL面では強い疲労感、うつ、日常役割機能などが損なわれている傾向にあります。
私が診た線維筋痛症の強いアロディニア症状
私が今までで診た中で、もっとも強いアロディニア症状は、髪の毛が額に触れるだけで激しい痛みを感じるというものでした。ある日、前髪が触れる痛みでパニック状態になり、自分で髪の毛をハサミで切ったという方がおられました。普段、ニット帽を被っていたのですが、症状がよくなった時、「実は私、こういう状態でした」とニット帽を脱ぎ見せてくれました。
アロディニアのその他の症状として、顔に風が当たると痛い、メガネやイヤリングが不快になる、髪を結んでいるのがつらい、といったものがあります。
アロディニアには「静的アロディニア」と「動的アロディニア」があります。
「静的アロディニア」は軽く圧迫しただけでも痛みを感じる場合を指し、障害部位に限局して起こります。 痛みを伝える神経であるAδやC線維の閾値が下がっていることが原因とされています。閾値の低下とは、痛がりやすい状態(感覚器)になっている状態です。
「動的アロディニア」は指でなぞるような刺激で痛みが生じる場合を指し、障害部位に留まらず広範囲に出現することが特徴です。これは、触覚を伝えるAβ線維の伝達がうまく行われていないために起こり、DRGや脊髄が関与しているといわれています。
メトトレキサートが効かない
MTX(メトトレキサート・リウマトレックス)を飲んでも痛みが続く(そもそもMTXは痛みを止める薬ではありませんが・・・)方や血液検査の数値がいいのに痛みを感じるという方は、この体で起きている現象を理解して、この現象に対応した治療を行わなければ、痛みを取ることはできません。
では、鍼灸院でこの現象に対応した治療をしているのか?というと、当院では行っております。実際、さきほどの髪の毛が額に当たると痛みがでるという方は、痛みがよくなり、全身の痛みはかなり改善しました。行ったことは、まずは、閾値を上げる鍼治療を行うのです。